【読書感想】女帝 小池百合子
ものすごく面白い本でほとんど一気読みしました。
感想を書きます。※ネタバレあり
読もうと思ったきっかけ
小池百合子さんには特別興味もなく「現役の都知事の本だから話題にもなるよなぁ」くらいにしか思っていませんでした。
ところがある時にたまたまたラジオで石井妙子さんと放送作家の鈴木おさむさんが話しているのを聞きました。
学歴詐称の疑い、ウンヌンを語っていましたが、興味深かったのが鈴木おさむさんの言葉。
「この本を語るときに皆、”これが本当だとしたら~”から入る」
「ほとんどミステリーに近い」
そして石井妙子さんが「調べるほどに矛盾がどんどんでてきて~」という趣旨のことを言っていて、それはなんだかおもしろそうだとアマゾンのレビューを見たらいろんな意見があり、とても興味を持ちました。
で、何年振りかに新刊を本屋さんで買いました。
読後に思った6つのこと
- リアル白夜行
- かわいそうなファザコン
- 女であることを最大限利用する天才
- PRの天才
- 近代政治ゴシップ本としても面白い
- 一方的な内容であることを忘れてはいけない
リアル白夜行
白夜行とは、東野圭吾さんの大作で、ファンの間でも大変な人気作であり、続編として『幻夜』もあります。
私は以前にこの2作について書いたことがあり、どちらもすごく好きな作品です。
悪趣味な楽しみ方ではありますが、白夜行、幻夜を読んでからこの作品を読むことをおすすめしたいくらいです。
■リアル白夜行と思った理由
白夜行の主人公の唐沢(西本)雪穂(からさわ(にしもと) ゆきほ)について、Wikipediaには下記のように紹介されています。
19年前の事件の容疑者の娘。並外れた美貌を持った少女。
小学生時代は貧しい暮らしをしており、質屋殺しの容疑者に母親がリストアップされた後、その母親を事故で亡くす。その後唐沢家の養女となり、学業や礼儀作法を身に着けてゆく。
その美貌に加えて、成績も優秀であったがそれゆえ、妬みも多くあった。そして、彼女にかかわる人物は必ず不幸に遭ってしまう。
子供のころに「貧しかった」が、「美人」と「頭の良さ」を武器に、どんどん「成りあがって」いくわけです。
そのためには手段は選ばず邪魔する者たちは「不幸になる」としても前だけを向いて突っ走っていくわけです。
これは雪穂と小池百合子さんの共通している点です。
ネットで調べると雪穂と小池百合子さんを重ねた人はやはり多いようです。
石井妙子さんはちょっと寄せたんじゃないかなぁ。
文体も東野圭吾さんのような読みやすいリズムがあり、、舛添要一さんが出てくるときはそれまで「助教授は~」「男は~」と固有名詞を出さずに散々引っ張ってから「助教授の名は舛添要一」と着地する辺りは幻夜の「表札には曽我孝道」とあったときのようなゾクゾクがありました(説明割愛)
そしてなによりも!
小池百合子さんの生き方を「イカロスの翼」に例えて「太陽に近づくと溶ける」という表現はなんとも「昼間に歩きたい ※太陽の下を歩けない」という白夜行に通じるものがありました。
本の最初に元同居人方も「白昼夢の中にいる」と表現してます。
かわいそうなファザコン
2つ目に思ったのは残念な形のファザコンということ。
ファザコンとは、で検索したらこちらのサイトが出てきました
ファザコンとは?ファザコン女性の心理的特徴20個と恋愛傾向・結婚は?
ファザコンには2タイプあるそうで、簡単に言えば
- 愛情を過多に受けた人
- 愛情不足の人
です。
「一卵性親子。もとは、ひどいファザコンだよ。でも、大人になってから毛嫌いするようになった。父親に苦しめられた、利用された、という思いがある一方で、結局、自分を一番、愛してくれたのは父親だという思いもある。複雑な愛憎が絡み合った関係だよ」
つまり、幼いころは「1」、大人になるにつれて「2」になっていってます。
これはかなり苦しかったんじゃないでしょうか。
いずれにしてもそっくりになっている様子がものすごくわかります。
読む限り小池百合子さんのお父さんはかなり無茶苦茶な人だったようです。
小池百合子さんは公人だから仕方ないにせよ、その父親をここまで書くのは故人とはいえ大丈夫なものなのか?と思うほどの書かれようです。(説明割愛)
滅茶苦茶な父親の性格、生き方を踏襲していると作者は語ります。
これはおそらくは作者の思い込みではなく本当に似ているのだと思いました。
女であることを最大限利用する天才
小池百合子さんの生きざまと性格を射抜いた一文だと思ったのはこちら!
セクハラという言葉もなかった時代。女性議員の多くが男性議員や後援会の男性、有権者から受ける性的ないやがらせや、悪質な冗談に苦しんでいた。だが、小池はそんな中で、むしろ、男たちを性的魅力で翻弄し、男の下心さえも逆手に取っているかに見えた。
これについては本を読む前から思っていました。
女性である自分をフル活用しているなと。
(ミニスカートの)小池が街宣車のはしごに足をかけると、地面に頭をこすりつけるようにしてカメラマンたちはローアングルで構えた。小池は、「それ以上、近づいちゃだめよ」と笑顔で注意しながら、はしごを登っていく。男性有権者も、選挙カーにへばりつくようにして小池を下からのぞきこんだ。
↑こちらは胸元をチラっと見せて男の視線をくぎ付けにして~、みたいなものですが、それよりももっと大きな意味合いでの女性の価値、紅一点の価値を自覚している人だと思います。
無意識のうちになんとなくそうなっている人もいますが、小池さんは間違いなく「分かった上で狙ってやっている人」です。
そういう女性は頭がいいし、男性の扱いがとてもうまい。
結婚相手を探す、なんてときもそうですが、ビジネスで権力ある人間とすり寄るときにもその能力は活かされます。
小池さんはそれらが超絶にうまく、賢い方です。時の権力者にどんどんすり寄って成功します。
一方でこんな指摘も的を得ているなと感じます。
男が組織の中で上り詰めるのは、大変なこと。努力して権力闘争を乗り越えて、ようやく、そのポジションを摑む。でも、小池さんのような若い女性は、見た目の良さと感じの良さで、あっという間に成功してしまう。男の成功者の苦労をわかっていないと思う。だから平気で男の人のメンツを潰す。
反対に「若い女性の価値」を自覚できていな若い女性は、恋愛においてもモテ期の無駄遣いをしてしまいがちです。
PRの天才
PRについてたくさんのアイデアを出し、成功させてきた人だということがよくわかります。
マスコミの扱いも猛烈にうまいです。
前述の「女性であること」と「PR」を掛け算することがあまりにもうますぎ、それだけで大衆を熱狂させられる人なんだと思いました。
数ある中でもすげ!と思ったのはこちら
(初当院の時)
当日、彼女が選んだのはサファリ・ルックだった。(中略)「どうしてそういう服装で」と問われた。小池は用意してきた答えを投げてやった。「国会には猛獣とか珍獣とかがいらっしゃると聞いたので」
記者たちは大喜びで小池を大きく扱った。小池に聞けば見出しになるようなコメントを言ってくれる。
大緊張の初登院の時にこんなことを考えて実行できる人が、果たして何人いるでしょう?恐ろしい限りです。
近代政治ゴシップ本としても面白い
小池さんが「ジジ殺し」してきた政治家は超大物ばかりです。
なので、政治家になってからの話は近代の総理大臣が軒並み名前を連ねますし、政治ゴシップ本としても面白い本でした。
同時に小池さんが政治家として主張する制作は何もなく、ひたすら「権力と寝る」姿がよくわかり、その潔さは感動すら覚えます。
一方的な内容であることを忘れてはいけない
作者を批判的に思う気持ちは一切ありませんが、そうはいっても一方的な内容であることは間違いないわけで、これをすべて鵜呑みするのは危険だと思いました。
この本の中で小池さんについてのポジティブな一文は「ラージ(学生時代の呼び名)は気配りの人なんです」ということくらいしか頭に残っていません。
この本が唯一残念なのはそういった「あたたかい小池百合子」の話があまりにもなかったこと。これではバランスを欠いてしまいます。
もしこれが本当のバランスならあとがきなどで「小池のあたたかい人柄を伝えることも書こうと思ったのだが、驚くことに証言がとれなかった」とか書くべきでしたね。。
また前述の初登院の記述で「小池は用意してきた答えを投げてやった」と悪意を感じる書き方をしており、このような表現は随所にあり、この辺もどうなんだろう?と思わざるを得ない点でした。
まとめ
小池百合子さんは「女性が女性のまま国会議員になった」数少ない方だと思います。
そして、女性であることを最大限にPRすることについては怪物のような大天才だと思います。
それだけでやってきた人と言っても過言ではないでしょう。
なんとなくその魅力に翻弄されていた人もこの本を読むと、アスベストや水俣病の被害者、拉致被害者の方に対してありえないような冷酷な態度、言動を知ったら、支持をやめるでしょう。↓
2002年9月17日、涙の記者会見をしている横田さんご夫妻の真後ろに立っていたのは小池百合子氏。
終了後、一度出て行った小池氏、戻って来て一言。「あったあ!バッグ」「私のバッグ、拉致されたかと思った」
あれ以来彼女のことは信用していない。— 蓮池透 (@1955Toru) August 22, 2018
同時になんというか「かわいそうな人」とも思いましたね。
人との縁が終わるときにわざと足蹴していくんですよね。
だから「ずっと味方」の人は周りにだれもいないという。。
人とのつながり方を知らないというのか、なんというのか。。
まぁ、本人が「利用してやっただけ」と思っているならそれまでですが。
「孤独」というより「孤高」になっていく小池百合子さんがこれからどんなことをするのかについてはとても興味深くなる本でした。
まぁ、すべて「これが本当だとしたら」ですが。
・・・学歴詐称については「詐称している」に1票です笑