【楽曲解説】Mr.Children「himawari」ミスチル史上最高傑作かも!

先日、重力と呼吸について感想を書いた中で「himawariは別格にいい」「ミスチルの曲の中でもベスト5に入るくらい好き!」書きましたが、今回はそのhimawariの楽曲解説をします。
- 歌詞の解説
- メロディー
- バンドアンサンブル
- コード
- MV
など、それぞれについて書いていきます。
A1、A2
優しさの死に化粧で
笑ってるように見せてる君の覚悟が分かりすぎるから
僕はそっと手をふるだけ「ありがとう」も「さよなら」も僕らにはもういらない
「全部嘘だよ」そう言って笑う
君をまだ期待してるから
- 優しさの死に化粧
冒頭からすごいインパクトです。
他界した直後の恋人のことをかいていますね。
- 「全部嘘だよ」そう言って笑う君をまだ期待してるから
言い換えるなら「全部嘘であってほしい!!」ですね。
恋人の死を受け入れられない主人公の心境が伝わり泣けてきます。。
B1
いつも
透き通るほど真っ直ぐに
明日へ漕ぎ出す君がいる
眩しくて 綺麗で 苦しくなる
ここで書かれている明日は、通常の明日ではなく、死を迎えることを連想させます。
余命宣告されてもなお、毎日を明るく元気に過ごしていた様子が伺えます。
それを見て「邪に生きている」主人公は胸が苦しくなっています。
サビ1
暗がりで咲いているひまわり
嵐が去ったあとの陽だまり
そんな君に僕は恋してた
言い換えるなら
- 僕が暗い気持ちを持っているときも明るく励ましてくれた君
- 忙しさでイライラしている僕を笑顔で癒してくれた君
- そんな君が好きだった
というところでしょうか。
A3
思い出の角砂糖を
涙が溶かしちゃわぬように
僕の命と共に尽きるように
ちょっとずつ舐めて生きるから
私はここの歌詞が特に好きです。
後述するMVでは嵐で角砂糖が飛んでいくところで泣きます笑
こちらも言い換えるなら
- 君との思い出を死ぬまで大事にする
ということでしょう。
B2
だけど何故だろう 怖いもの見たさで
愛に彷徨う僕もいる
君のいない世界って
どんな色をしていたろう?
ここも好きです。
言い換えるなら
- この先、君以外の誰かを好きになれるだろうか
- 君がいなくなっても明るく生きていけるのだろうか
ですね。
大恋愛が終わった時に誰しもが思うことかもしれません。
そして多くのアーティストが「君以外愛せない」「君以外の誰かを~」「君がいない毎日なんて~」と歌います。
しかし、桜井さんはそうは歌いません。
- 君のいない世界って どんな色をしていたろう?
桜井さんの歌詞のすごさについては以前に書きましたが、ここはまさしく「どこにでもある言葉でオリジナリティが出せる」桜井さんのすごさを感じます。
もちろん泣けます笑
サビ2
違う誰かの肌触り
格好つけたり はにかんだり
そんな僕が果たしているんだろうか?
ここも好きです。
言い換えるなら
- 他の誰かと付き合ったとして、君と過ごした時間より楽しいと思うことなんてあるのだろうか?
というところでしょうか。
このままだと凡庸になりすぎるところを「違う誰かの肌触り」「格好つけたり はにかんだり」と極めて日常的な言葉で(!)、凡庸さをなくしています。
C1
諦めること
妥協すること
誰かに合わせて生きること
考えてる風でいて
実はそんなに深く考えていやしないこと
思いを飲み込む美学と
自分を言いくるめて
実際は面倒臭いことから逃げるようにして
邪(よこしま)にただ生きてる
去り行く(ひまわりのような)彼女との対比として自分の未熟さを歌っていますね。
深読みすれば
- そんな至らない自分を好きでいてくれた君に感謝している
- 邪な僕が生きて、素晴らしい君が死ぬなんて不条理過ぎる
という風にも解釈ができます。
B3
だから透き通るほど真っ直ぐに
明日へ漕ぎだす君をみて
眩しくて 綺麗で 苦しくなる
ミスチルにしては珍しくBメロがほぼほぼ同じ形でもう一度登場します。
多分、桜井さんもここをどうするか悩んだのではないかと思います。
結果、ここは重要だし、2回目は1回目とは違う聴き方になると思ったことと、後述の通り、「眩しくて 綺麗で 苦しくなる」の部分を桜井さんも気に入っていたからではないかと推察します。
サビ3
暗がりで咲いてるひまわり
嵐が去ったあとの陽だまり
そんな君に僕は恋してた
そんな君を僕は ずっと
最後が「ずっと」で終わるのは芸術的です。
最後の行を
- ずっと君を好きだ
- ずっと忘れない
と最後まで言わないことで文字通り「ずっと」がより伝わります。
歌詞についての斬新さ
失恋ソングは世の中にたくさんあり、亡くなった恋人に向けた歌も「会いたい」「ロード」など様々にありますが、himawariを聴いて思う斬新さは主人公の謙虚さと相手への敬意を感じられる点です。
- 邪な自分
- 素晴らしい彼女
なぜ、邪な僕のような人間ではなく、素晴らしい彼女が先に逝かないといけないのか。
そんな嘆きが含まれて、好きな人が亡くなって悲しいだけではないものが伝わってきます。
その点が一段と感動を生んでいると思います。
そして前述の歌詞の解説の通り、そのまま歌ったら凡庸になるところを要所要所で見事に言い換えて歌っています。
どこにでもある言葉でオリジナリティが出し、それでいて凡庸なものにならない、という作詞家としての桜井さんの天才ぶりが一番感じられる作品かもしれません。
小林麻央さん
この曲はリリースされたのが2017年7月26日です。
小林麻央さんが他界されたのは2017年6月22日です。
私の中でこの2つが頭の中でリンクしてしまう部分があり、小林麻央さんを亡くされたときの海老蔵さんの気持ちを想像してしまいます。
私が市川海老蔵さんだったら悲しすぎてhimawariを聴けません。
想像するだけでも泣けてきます。。
最愛の人を亡くしたときは、聴くのがあまりにも辛い曲です。。
・・・音楽的な面にも触れていきます。
ミスチル割り全開!
メロディーで特徴的なのはBメロとサビの2小節が同じというところ。
多分、ミスチル初じゃないかと思います。
このやり方、ありそうであまりないです。
パッと思い付くのはスキップカウズの「赤い手」くらいですね。
今になって桜井さんがこの手法を使ったのはなぜか知りたいなぁ。
で、
このメロディーが「ミスチル割り」になっています。
ミスチル割りとは、ミスチルがタイアップ曲などで多用する、符点8分音符を使用したメロディーです。
以前にミスチル桜井さんの作曲のすごさを「innocent world」を例に3つに分けて解説の記事で、ミスチル割りが使われている曲をいくつか挙げました。
himawariではBメロ、サビの冒頭2小節はミスチル割りを多用して構成されています。
そして、
himawariの場合、Aメロの冒頭もミスチル割りです!
さらにギターソロもミスチル割りです!
つまり、
A、B、サビ、ギターソロの冒頭は、全部ミスチル割りです!
ここまでミスチル割り全開な曲は過去にありません。
Bメロがたまらない!
中でも私は最初のB1メロがたまらなく好きです。
透き通るようにまっすぐに、というところで、ベースが1オクターブあがり、高音をロングトーンで鳴らしています。
(先日のライブではここでナカケーを凝視してしまいました笑)
このフレーズが透き通るように、という言葉にピッタリです。
で、そこではドラムがかなり音数が少なくしていて、メロディーとベースの美しさを際立たせています。
「透き通るようにまっすぐに」という言葉に、演奏が完璧にリンクしています。
そして、
眩しくて、綺麗で、と言葉もメロディーも「タメた感じ」できて、そこから「苦しくなる」と言ってから「Oh Oh」となります。
「Oh Oh」をはじめて聴いたときは鳥肌がたちました。
彼女のような良い人が、若くして亡くなる不条理を嘆く主人公の叫び声のようにも聴こえます。
※以下、キーをCとして説明します。
メロディーは「ファ、ミ」で、このミの音コードはE7/G#という不安定な音です。
その前の「苦しくなる」という歌詞でベースがF→F#→Gと上がってきてから、メロディーが「ミ」のところでG#になります。
このベースラインが半音ずつ上がっていくところが、「苦しくなっていく感じ」に聴こえませんか?
眩しくて、綺麗で、苦しくなる、
と、段々苦しくなり(ベースが半音ずつ上がって)、苦しい中で「Oh Oh」と叫びます。
でも着地は安定感のないコード(E7/G#)なんですね。
まるで、主人公そのもののようです。
苦しくて叫ぶものの、苦しさが解決していないんです。
本当によくできています。
ピアノやギターがある方は是非このF→F#→G→G#のベースを弾きながら歌ってみてほしいです。
ここをF→F→G→Eと弾くと違いが一段とわかります。
ミスチルアンサンブルのすごさがわかる曲
前述のBメロの解説の通りですが、ミスチルはこういう演奏全体が歌詞にリンクしていることがあります。
切ないメロディーには切ない歌詞をのせるのが桜井さんのソングライティングの魅力ですが、バンド全体でそれをやるのはとても難しいことです。
なぜそうなったかについて3つのことが考えられます。
- この歌詞だから、この演奏にした
- この演奏だから、この歌詞にした
- なんとなく、たまたまこうなった
私が思うに、多分、3つ目なんですよね。
無意識のうちにメンバー全員が同じ方向に向かっているというか。
個々のセンスがうまく絡み合い、全員が同じ方向に向かうことで楽曲の世界観が磨かれ、素晴らしい楽曲を生み出している
これこそ、ミスチルのバンドアンサンブルの何よりのすごさです。
ミスチルを「桜井和寿とバックバンド」と思っている方は考えを改めてください!!笑
個々のパートについても書いていきます。
ベース
前述の通り、B1のベースはすごく好きですね。
ミスチルのベース(中川敬輔)はオブリも多いので、コピーすると大変だけど楽しいと思います。
奥田民生さんが「ミスチルはメロディーとベースだけでそのすごさがわかる」と言っていましたが、himawariもその1曲ですね。
ただ、himawariはそもそもベースのvolumeが小さめです笑
もうすこし大きくしてほしかったなぁ。。
ギター
いつも通り、めちゃくちゃ素晴らしい唯一無二のバッキングをしています。
田原健一さんはほんとうに素晴らしいバッキングギタリストです!
しかし、あえてここではギターソロについて書きます。
このギターソロがものすごくいいです。
フレーズと音色が完璧なんです。
どういうことかというと、まず、ギターソロとなるとギタリストはギターソロっぽく弾きたくなるものです。
ところがhimawariのギターソロは極めてシンプルなフレーズです。
そして、歌メロに倣ってミスチル割りです。
このフレーズをたっぷりの歪みを効かせて奏でます。
歌の主人公の純粋さと苦悩が現れているかのようです。
ギターソロが単なる間奏(インターバル)ではなく、曲をよりドラマチックにしています。
MVでは、ギターソロで嵐が訪れますが、音楽と映像がものすごく合っていて素晴らしいです!(後述)
ドラム
いつも通り、歌の邪魔をせず、前に出すぎずのフレーズを叩いています。
ただ、叩き方が強く(いい意味で荒い)、それが、嘆き、悲しみ、不条理に怒り、落胆している歌の世界観と合っています。
私が好きなのは最後のサビ(サビ3)の直前のフィルです。
それまで8符音符メインのフィルだったのに、ここの4拍目だけ高速16分音符のスネアが入り、楽曲にスピード感を与え、ラストのサビをもう一段階盛り上げています。
ボーカル
11月18日(日)のさいたまスーパーアリーナのライブを観に行ったのですがで、「僕は恋してた」のところをCDと同じように歌っていてびっくりしました。
CDではものすごく儚く、かすれた声で歌っているんですね。
これって、
何万人の前のライブで再現するのは普通は無理なんですよ。
否が応でもテンションがあがりますし。声は大きくなるし。
重力と呼吸は、全体的に今までと歌い方を変えていますが、himawariだけはこれまで通り、「歌の主人公になって」「音程がブレるのもアリ」という桜井さんの真骨頂とも言えるボーカルだと思います。
やっぱりこういう歌い方にしてほしいなぁ。。
恋をしていた、を音程バッチリで歌ったらそれはそれであじがあるでしょうけど、やっぱりかすれた声で音程をわずかに外したこの感じの方が主人公が見えてきて感動します。
切ない音(コード)には切ない言葉のミスチル節
もうひとつミスチル節を感じたところを紹介します。
Cメロの「思いを飲み込む美学と~」のところです。
ここの部分を味わうようによく聴いてみてください。
ここだけ暗くなる感じがしませんか?
実はマイナーキーに一時的に転調しています。
メジャー、マイナーの言葉の通り、マイナーは暗い音です。
そして、そこでメロディーも「レレドシラソ#」と下がるので一段と暗くなる感じが出ています。
この暗くなるところにのっている歌詞は?
思いを飲み込む、です。
メロディー、コード、歌詞が完全にリンクしています。
なんということでしょう!笑
しかも、ミスチルの場合、前述の通り、桜井さん(詞と曲)だけが良くできていればまだわかるのですが、他のメンバーの演奏ももれなく同じ方向に向かっているのがすごいです。
ミュージックビデオもいい!!
これだけの名曲に映像をつけるとしたらなかなか大変です。
下手したら曲の評価を下げてしまいかねません。
しかし、himawariのMVはめちゃくちゃいいです。
・・・今見ても泣きました笑
まとめ
- 好きな人が若くして他界して悲しい、だけではない詞の世界
- メロディーがミスチル割り全開
- ミスチルのバンドとしての凄さが全開
- 音楽に負けない素晴らしいミュージックビデオ
そんなところでしょうか。
余談として、、君の膵臓を食べたい
・・・ところで、私はまだ君の膵臓を食べたいを見ていないので、なんとも言えませんが、こんな凄い曲をかかれたら映画本編が負けてしまわないのでしょうか?笑
本編で泣いてなくてもエンドロールで泣いてしまい「いい曲だった」という感想になってしまわないでしょうか?笑
そんな心配をしてしまうほどの名曲です。
恋人との別れの歌をこれまでに何曲もかいているのに、今までのどの曲とも似ていないことも、ものすごいことです。
いやはや、
ミスチルはやっぱりすごい!!