ミスチルの歌詞は何故、多くの人の心をつかむのか!?

3つにわけて解説しますが、その前に関ジャムの放送について

関ジャムでミスチルが取り上げられました。

関ジャムは録画して見る数少ない番組の1つですが、テーマがミスチルとなれば、キリンぐらい首を長くして待っていた(!)放送でした。

  • 歌詞
  • 作曲編曲
  • 歌(ボーカル)の表現力
  • 小林武史の編曲

主にこの4分割で番組が進められたので、私もこれに沿って解説を勝手にします笑

 

今回はミスチルの歌詞についてです。

関ジャムでは、いしわたり淳治さんの「タガタメ」の解説が素晴らしかったです。

「平和の歌は道徳的・凡庸になりがち。自分の日常と世界平和がどうつながっているのかを表現しなければならない。ミスチルはそこが最短ルートで完璧にできている」

  • ディカプリオの出世作なら さっき僕が録画しておいたから(自分の部屋)
  • この星を見てるのは君と僕とあと何人いるかな(空、世界)
  • ある人は泣いてるだろう ある人はキスでもしているだろう(他人)
  • 子供らを被害者に 加害者にもせずに(子供の未来)

 

曲も素晴らしいですが、解説も素晴らしい!

 

以前に私も「I’m talking about Lovin’」 を解説しましたが、1曲ずつの解説はこれからまた順にやるとして笑、
全体としてのミスチルの歌詞のすごさを解説します。

I’m talking about Lovin’の楽曲解説

 

ポイントを以下の3つに分けて解説します。

  1. すべての歌詞に意味がありながら、単純ではない
  2. 同じテーマで何曲も名曲が描ける
  3. どこにでもある言葉でオリジナリティが出せる

1.すべての歌詞に意味がありながら、単純ではない

ミスチルの魅力を語る上で最も欠かせないのが歌詞です。

ミスチルの歌に勇気をもらったとか、あのフレーズが好きとか、ミスチルファンなら必ずあります。

そこまで歌詞が支持されるのは、歌詞に意味があるからです。

当たり前のようですが、これはかなりすごいことです。

邦楽アーティストの半分近くは実は、歌詞は誰も掘りさげて聴いてないと思います。

特に最近は音楽は無料化されて、ちょっと聴いて嫌ならスキップされます。

だから何度か聴いて良さがわかる曲よりも「会いたい」「愛してる」などの1回で理解ができる単純なメッセージが繰り返される歌の方が好まれます。

メッセージ性の強い(悪く言えば単純な)歌詞の邦楽以外は、洋楽的に聴かれているとも言えますし、BGM的に聴かれているとも言えます。

当然、それが悪いわけではありません。

しかし、ミスチルはそのどちらでもありません。

ファンは歌詞の全体の内容まで含めて聴きます。

これは本当にすごいことです。

歌詞ってある程度ふわっとさせれば「聴き手の解釈でよろしく!」ということにすればいくらでも成り立ち、ファンですら歌詞に興味がないこともあります。

良い例として挙げるなら、スピッツでしょう。

スピッツの歌詞に勇気をもらった、涙が出た、という人はあまりいないでしょう。

でも「歌詞がだせー!」と嫌う人もいません。スピッツという雰囲気であればOKなわけです。

あれだけ知られている「チェリー」すら、何の歌か考えたことがある人はほとんどいないでしょう。

これはこれですごいことです。

何を歌っているか伝わる内容で、なおかつ陳腐化させずに多くの人のハートを掴んで作品を生み続けているのはミスチル以外にいないのではないでしょうか。

2.同じテーマで何曲も名曲が描ける

ミスチルはこれまでに数多くの楽曲を発表しています。

歌詞で言いたいことを歌にした場合、アルバム1枚あれば10くらいのテーマが扱えて、もうネタ切れします。

そうなるとなんとなく意味があるようなないような歌詞の曲が自然に増えていきます。

しかし、ミスチルの場合、歌うテーマが同じでも全く違うオリジナリティのある曲として生み出せます。

具体的に言えば「結婚式で流したいミスチルの曲は?」という問いにたくさんの曲が思い浮かびます。

思い付く範囲で挙げてみます。

  • 抱きしめたい
  • sign
  • simple
  • 君が好き
  • しるし
  • 365日

・・・まだまだありますが、パッと浮かぶ名曲だけでもこれだけすぐに挙がります。

 

結婚式向けの曲でこれだけ挙げられて、その全部が名曲ってありえないことです。

しかも被っている感じはゼロです。

ちなみに小林武史さんとAKKOの結婚式では小林さんのリクエストで「花」を歌ったと記憶してます。

が!

今、ググっても出てこないので嘘情報かもです笑

 

1つの事象からたくさんの曲が描ける才能は「失恋ソング」だとさらに顕著です。

こちらも思い付く範囲で挙げてみます。

  • over
  • 渇いたkiss
  • Another Story
  • CANDY
  • 花言葉
  • やわらかい風
  • 忘れ得ぬ人

・・・こちらもまだまだありそうです。

しかも解釈が多様にできる曲ものもあります(説明割愛)。

こうしてみると名曲が多すぎて改めて驚かされます。

 

3.どこにでもある言葉でオリジナリティが出せる

ミスチルの歌詞は変に文学的になることがなく、多くのものはどこかで聞いたことがありそうなフレーズが多いです。

でも、

メロディーや前後の歌詞などが絡み合って圧倒的なメッセージになります。

  • 出会いの数だけ別れは増える それでも明日に胸は震える(くるみ)

この文章を棒読みしたら「まぁね。そうだよね。誰かもいってそうだよね」となるのに、桜井さんが歌うと涙が出ます笑

これがほんとにすごいです。

凡庸なもので感動を与えるのは並大抵のことではできません。

どこにでもある言葉でなぜ感動するのか

随分前に爆笑問題の2人が小沢健二の歌詞を褒めていました(私も好き!)、

爆笑問題 小沢健二の動画

(田中)たとえば、キャッチコピーもそうじゃない?CMで何かを売るにしたって。
「これ超美味しいから、食べてね」って言ったんじゃ、CMとしては成り立たない。
それを何かで表現するわけじゃん。でも、全部そう(直接的な表現)なのよ。(最近の若い子に人気のある歌は)

コレに沿ってワインを飲んだ後の食レポの感想で例えてみます。

  1. (アイドル)「うまい!やばいよこれ!マジやばい!やばいやばいやばい~!超美味しい!」
  2. (食レポタレント)「口に入った瞬間感からぶとうの香りがふわっと広がります。酸味、甘み、フレッシュさのバランスがすごく良いです。美味しいです。サラダやカルパッチョといった料理と合うと思います」
  3. (くせのあるソムリエ)草原を駆け巡る乙女のような香りです。喉元を初恋のときのドキドキ感が通るようです。

1.は「美味しいことが伝わる」

2.は「どう美味しいのか、何と合うのか、ワインの個性がわかり興味を惹かれる」

3.は「なんだかかっこいい感じがわかる(どのワインの感想にも使える)」

 

これでいうと、

1.の歌詞は「君がいなくなって悲しいんだ。まだ僕は君が好きなんだ。でもこの悲しみを乗り越えるんだ」

2.の歌詞は「何も語らない君の瞳もいつか思い出となる 言葉にならない悲しみのトンネルを さぁくぐり抜けよう(over)」

3.の歌詞は「セピアに染まる街で 僕は佇み ただ君の名前を叫んだ トンネルを抜けたら 眩い星達が微笑んだ」

というところでしょうか。

1と3の歌詞を描くグループはたくさんいても、2を軸にして1と3の要素を盛り込んだ歌詞を描ける人はほとんどいません。

ただ単に「君が好きだから抱きしめたい 10年先も20年先も君と生きれたらいいな」と歌わず、そこにストーリー性をもたせたり、比喩が入ることで歌詞のバランスが良くなり、凡庸さもなくなり、なおかつ「真っ直ぐなメッセージ」も盛り込まれて子供から大人まで味わって聴けるポップスになっています。

傘太郎が好きなミスチル名言 ベスト5

  • 今 僕のいる場所が 探してたのと違っても 間違いじゃない きっと答えは一つじゃない(Any)
  • 障害を持つものはそうでないものより 不自由だって誰が決めんの? 目じゃないとこ 耳じゃないとこを使って 見聞きをしなければ 見落としてしまう 何かに擬態したものばかり(擬態)
  • 良いことがあってこその笑顔じゃなくて 笑顔でいりゃいいこと あると思えたら それが良い事の序章です(PADDLE)
  • 雨に降られたら 乾いてた街が滲んできれいな光を放つ 心さえ乾いてなければどんな景色も宝石に変わる(エソラ)
  • めぐり会えたことでこんなに 世界が美しく見えるなんて 想像さえもしていない 単純だって笑うかい 君に心からありがとう言うよ(HANABI)

他にもたくさんありますが、これも頭抱えて5つ選ぶと終わらないので笑、パッと浮かんだベスト5です。

Anyは特に好きですね。

このブログのタイトルにしようかと思っていたくらいですから笑

桜井さんの天才さに圧倒されたワンフレーズ

名言とは違いますが、桜井さんは天才だと感じたフレーズを紹介します。

 

街灯が2秒後の未来を照らし オートバイが走る(ロードムービー)

 

何気ないワンフレーズですが、私は昔、作詞・作曲をやっていたからか、最初に聴いた時に「この表現はなかなか出てこない」と思いました。

バイクで走る歌ですから「A地点からB地点」の「距離」や「速度」を歌うのが普通です。

  • 街灯が照らした100メートル先の明るいアスファルトに向かってスピードをあげて走る

などになるのが普通です。

これを2秒という「時間」に軸を移すことでバイクの疾走感がより出ています。

さらに細かく言えば

  • 僕は2秒後には街灯に照らされている

と「主人公の2秒後の状態」を中心にせずに

  • 街灯が2秒後の未来を照らし

と「バイクと街灯がつくる2秒後の世界」を中心に描いているのがたまらないです。

そして、歌詞全体を通して「ただバイクに乗っている歌ではない」ということから、より、歌に彩り、深みがでます。

歌詞を書いたことがない方も「バイクに乗っている時の情景を書いてください」とリクエストされて「街灯が2秒後の未来を照らしている」と出てこないのはなんとなくわかっていただけるのではないでしょうか。

 

いやはやほんとに・・・

 

桜井さん、天才!!

 


※2018年6月1日追記

後日、この歌詞について桜井さん自身がコメントしていました。

桜井さんも「一番好きな歌詞」というほどで、個人的にすごくうれしくて「桜井さんが自画自賛するフレーズを前から絶賛していた話

という記事を書きましたので、そちらも合わせてご覧ください。

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