【楽曲解説】Mr.Children「Another Story」
恒例のミスチル解説をやります。
今回はAnother Storyです。
・・・それにしてもこのyoshimiさんて、なんで動画使用がOKなんでしょう?
こうやって利用している私が言うのもなんですが笑
ファンの間では人気の曲で、歌詞の解釈について物議を醸す作品です。
ネットで私もいくつも見ましたが、歌詞の解釈がいろいろありびっくりでした。
もちろんいろんな解釈があっていいと思うんですが、私なりの解釈を書いていきます。
セクションごとに解説をしていきますが、その前に大前提として、ということを先に書きます。
「Another Story」と「靴ひも」の関連性
ネットではAnother Storyは「靴ひも」の続編的な曲としかて描かれたという情報を多く見ました。
- どちらもバスに乗っている
- 靴ひもでは情熱的な恋をしていたのに、その後、2人が冷めた時期を迎え、情熱的な恋をしていたときとは違う物語、ということでAnother storyとなっている
- それは桜井さんも言っていた
おおよそこのような内容なのですが、私は否定的な考えです。
それぞれ理由を書いていきます。
バスについて
靴ひもの主人公は本当にバスに乗っていますが、Another storyは比喩として描かれています。
ギター弾きの少年がバスに乗って恋人に会いに行く歌ではないと私は思います。
最初に聴いたときから「主人公がバスに乗っている」と思ったことがなく、ネットではその解釈の方が多くでとても驚きました。
1つ言えるのは、ブルーハーツの「青空」を知っているからかもしれないです。
青空でも比喩としてバスが出てきます。
運転手さんそのバスに僕も乗っけてくれないか 行き先ならどこでもいい
こんなはずじゃなかっただろ? 歴史が僕を問いつめる
まぶしいほど青い空の真下で
恐らく桜井さんも青空に影響を受けてこの歌詞が生まれたんだと思います。
こちらの歌詞もローザパークスを連想して本当にバスに乗っていると解釈する方もいるでしょう。
それでも全然矛盾しないですし、成立します。
私は比喩として捉えますが、この微妙なダブルミーニングもAnother Storyと類似しています。(後述)
「靴ひも」とは違う物語ということでタイトルが「Another Story」になっているということについて
これも私からしたら「んなアホな!?」という衝撃を受けました。
理由は2つ。
1つは、リスナーはみんな靴ひもを知っているという前提で描いた曲ということになりますが、桜井さんがそういう主観的な視点のみで曲を描く人だと思えないんですよね。
だとしたらこんなにたくさんの人を感動させる曲を描き続けられないのでは?と。
もう1つは1曲単体で100%成立できるものを作ると思うからです。
仮に3部作のようなものを作ったとしても、1曲ずつでも成立するものを作るはずです。
Another Storyのタイトルが靴ひもと違うストーリー、ということが由来だとしたら、1曲単体では成り立たない歌ということになります。
それはアーティストの性としてやらないと思うんですが。。
もしやるなら「第一楽章」「ロード第2章」とか数字を入れて「これで完結じゃない作品だからね 」とするはずです。
そうじゃないとタイトルが意味不明になります。
桜井さんの発言について
その昔、桜井さんが雑誌の取材でアマチュア時代にしていたバイトを聞かれて「AV男優」とふざけて言ったらそれが実話のように広まったことがありました。
インタビューで場のノリで軽く言ったり「そういえばあの曲とこの曲が関連あるように聴けるってことに最近気づいて」なんてことはよくあることです。
おそらくはそういう話が大きくなっただけではないかと思います。
少なくとも、靴ひもの続編を描くぞ!とか、描き終わってこから「バス繋がりで靴ひもの続編みたいだ!よし!タイトルはAnother Storyだ!」ということはまずないと思います。
以上の点を踏まえてまずは歌詞の解説からはじめます。
・・・重ね重ね、私の勝手な見解ですので、鵜呑みは禁物です。
そして解釈は100通りあってもどれも正解で自由だと思います。
Aメロ(1)
最終のバスにはまだ間に合うかなぁ
遠くの街まで君を迎えに行く
いつも笑ってた 無理してたんだな それも分かってた
「最終のバスにはまだ間に合うかなぁ」
このフレーズが私はとても好きです。
もう手遅れかなぁ?
と、歌ったら陳腐になるところを見事な比喩で表現して冒頭から歌詞の世界観に引き込まれます。
遠くの街まで君を迎えに行く、というフレーズも、もうずいぶん長く君と会っていないからなぁと歌わずに、比喩が続いてます。
そして、付き合っていた頃は、楽しそうにしていたけど、君は無理をしていると僕も気づいていた、と省みています。
Aメロ(2)
自分のことばかりいつも主張して 君の言葉なら上の空で聞いて
ギターを弾いてた ぼんやりといつも ギターを弾いてた
自分の好きなこと(ギター)ばかりやってしまって、彼女を放ったらかしにしていたんですね。
この経験がある男性は多いんじゃないでしょうか。(1回目)
サビ(1)
ごめんねって言葉 君は聞き飽きてるんじゃないかなぁ?
どんな風に言えば 優しい君は戻ってくるかなぁ?
よく出かけた公園をバスは今通過中
いつかの君が横切る
※上の2行がBメロで、下の2行からサビとも捉えられますが、私としてはこれ全部でサビと捉える方が自然なので、そちらで書き進めます。
付き合っているころは何かあると「ごめんね」と主人公は言っていたようですね。
この経験がある男性は多いんじゃないでしょうか。(2回目)
君になんて言えばいいのだろう、と悩んでいますね。
そして楽しかった頃のこと(よく出かけた公園)をつい思い出して(バスが通過)、せつなくなっています。
Aメロ(3)
記念日を携帯が知らせてくれて
そんなときばかりうまく立ち回って
誇張して言えば そんな感じだろう 君にしてみれば
この経験がある男性は多いんじゃないでしょうか。(3回目)
サビ(2)
抱き合いながら 僕らは孤独とキスをして
分かったような台詞 ささやきながら眠りに落ちて
朝が来て日常が 僕らを叩き起こし
逃げるようにベットから這い出る
孤独とキスをする、という表現も素敵ですね。
ここでいう孤独は
- 孤独な君とキスをする
- キスをしたのに繋がった感覚になれず、逆に自分自身が孤独を感じる
というどちらの意味がありますね。
そして「愛してる」「好きだよ」などの台詞を言って眠りにつき、朝になったら前夜のことはなかったのように慌ただしく仕事に向かう姿が描かれています。
この経験がある男性は多いんじゃないでしょうか。(4回目)
共通する孤独感
孤独とキスをする、という歌詞から、以下の2つを思い出しました。
- 宇多田ヒカル「For you」にある「君にも同じ孤独をあげたい」
- 浜崎あゆみ「SURREAL」にある「ひとりぼっちで感じる孤独より ふたりでいても感じる孤独のほうが 辛い事のように」
多くの人に支持をされ、心を揺さぶる作品を作れる人には「僕も君も孤独同士」という共通の孤独感があるのかもしれないですね。
ちなみに、宇多田ヒカルさんと桜井さんは対談でお互いにシンパシーを感じ合ってて、話が盛り上がって対談時間を延長したことがあります。
詳しい内容は忘れましたが、桜井さんが遠慮がちに「宇多田さんの作品は自分と似ているものを感じる」と言ったら「私もです!」となり「よかったー。嫌がられるんじゃないかと思ってなかなか言えなくて」「私もです!」みたいな内容だったと記憶しています。
作曲については「コードで鳴らさずにメロディーだけがテンションにいく感じが良くて~」などのマニアックな内容で「ポップスの深いところを知っている人たちだ。さすがだ!」と思ったのを覚えています。
・・・解説に戻ります。
Aメロ(3)
最終のバスは君にたどり着いて
恐る恐る僕は君の名を呼んだ
君は笑ってた 無理はしないでよ だけど笑ってた
ここの解釈はとても難しいです。
本当に会っているのか、頭の中でのシミュレーションなのか、比喩なのか。
会っているとしたら「久しぶりだね○○。」と言ったのでしょう。
冒頭でバスは比喩というわりに矛盾しますが、ここは実際に会ったときのことのように感じます。
なかなかそうじゃないと「君は笑ってた 無理はしないでよ」にならないと思うからです。
ちなみにライブでは「君は笑ってたっ」と最後の「た」を短くきって歌うのですが、こちらの歌い方も表情も素敵です!
サビ(3)
夢とか理想とかおもちゃみたいにまだ思ってるかなぁ?
分かり合うなんてそう簡単じゃないのは分かってる
私が元バンドマンだったからかもしれないですが、ここは「おれはギターでメシを食えるようになるのが夢なんだ。軽い気持ち(おもちゃみたいやもの)じゃないんだ。ちゃんと仕事して結婚とかを現実的に考えている君と分かり合うのは簡単じゃないとは思っているよ」という解釈になります。
あれ?バスは比喩で「ギター弾きの少年がバスに乗って恋人に会いに行く歌ではない」と言っていた割に段々とリアルな世界の話になってきてます笑
サビ(4)
ごめんねって言葉 君は聞き飽きてるんだろうけど
誤解が生じないように 簡潔に伝えられぬもんかなぁ
君と生きる毎日が なんだかんだ言って嬉しい
そう君の笑顔と共に
そう君の笑顔と共に
そしてそれらを「好きなことや夢が第一で、君の事はどうでもいいっていうことじゃないんだ。誤解をしないでほしいんだ。わかってもらえないものか」と悩んでます。
そして、最後に導き出した言葉は「君と生きる毎日が なんだかんだ言って嬉しい。君の笑顔と共に」でした。
・・・でもいいのですが、その気持ちをさらに簡潔にどう伝えるのか、という途中経過なのかもしれないですね。
歌詞のまとめ
付き合っていた頃は仲が良かった2人。
しかし、主人公が自分の好きなこと(または夢に向かうこと)ばかりを優先して彼女は離れていきました。
疎遠になってしばらく経って「やっぱり君といたい」と思った主人公はしばらく時間が空いてしまったからもう無理かもと思いながらも彼女への思いを募らせます。
彼女とやり直すにはどうしたらいいだろう?と主人公は悩みます。
久しぶりに会って名前を呼ぶと彼女は笑いました。
主人公は何日も考えていた言葉を伝えました。
「君の笑顔をずっと見ていたいんだ」
・・・というところでしょうか。
つまり、彼女に会うまでの気持ちをバスを比喩として表現して、
会ったところがリアル、という気がします。
Another Storyというタイトルの意味
私が思うタイトルの意味は「彼女への想いをバスに例えた歌」と「ギター少年が復縁をお願いしにバスに乗って彼女に会いに行く歌」のどちらでも解釈でき、「それだけじゃなくてもう1つ解釈があるから」ということで、Another Storyなんだと思います。
さらに加えるなら、バスを比喩として作詞をして完成したものをみたら「これ、本当に会いにいった歌としても捉えれるじゃん」となりAnother Storyというタイトルをつけたのではないでしょうか。
いわば、ダブルミーニングソングですね。
RCサクセションの「雨上がりの夜空に」のように、がっちりとしたダブルミーニングではなく冒頭の「青空」のような「どちらでもOKで最後は同じところに着地」という形をとっています。
「最終のバスにはまだまにあうかなぁ」を
- 本当にバスに乗っている
- 素敵な比喩
このどちらで捉えるかで解釈が変わります。
で、
「彼女に会ったこと」だけが共通のリアルなのではないでしょうか。
つまり、「彼女に会いに行く男性の歌」であって、ギターやバスは「リアルでも比喩でもどっちの解釈もOK」→Another Storyじゃないかと思います。
ぶっちゃけた話、「ギター弾きの少年がバスに乗って恋人に会いに行く歌」なんて思うの!?さぶいわ!!読解力ゼロか!?と、否定的に思っていたのですが、今回、解説を書いてみて発見だったのは「ギター弾きの少年がバスに乗って恋人に会いに行く歌」でも元バンドマンの私には響くということでした笑
サビ頭のせつない音について
少し音楽的な話も。
Another storyはミスチルの曲の中でも「サビが弱い」曲です。
シングルのカップリングに最適な曲ですね。
しかしそのサビ頭の「ごめんねって言葉~」のごめんねの「め」の音が不安定なのがわかるでしょうか?
キーをCで説明すると、
「ファ、ラ、ド、ミ」という和音の上で、「シ」を歌っています。
宇多田ヒカルさんとの対談のときに言っていた「コードで鳴らさずにメロディーだけがテンションにいく」やり方ですね。
そしてこの不安定でせつない響きに乗っている歌詞はというと
- ごめんねって言葉 君は聞き飽きてるんじゃないかなぁ?
- どんな風に言えば 優しい君は戻ってくるかなぁ?
- 抱き合いながら僕らは孤独とキスをして
- 分かったような台詞 ささやきながら眠りに落ちて
- 夢とか理想とかおもちゃみたいにまだ思ってるかなぁ?
- 分かり合うなんてそう簡単じゃないのは分かってる
- ごめんねって言葉 君は聞き飽きてるんだろうけど
- 誤解が生じないように簡潔に伝えられぬもんかなぁ
驚くべき事に・・・
全部せつない!
せつない音にはせつない言葉が乗せてあるミスチル節が炸裂してます。
そして、
たった1曲にこれほどの名フレーズを詰め込んでいることにも驚きます!
奥田民生さんが「3曲分が1曲に詰まっている」という趣旨のことを言っていたことがありましたが、頷けます。
サビのひねりポイント
- ごめんねって言葉 君は聞き飽きてるんじゃないかなぁ?
- どんな風に言えば 優しい君は戻ってくるかなぁ?
1回目のサビの2行ですが、1行目と2行目でメロディーが微妙に違いますね。
「君は戻ってくるかな」のところで、切なくなる感じがわかりますでしょうか。
これは「innocent world」の「またどこかで会えるといいな~」と同じで後ろで切ないコードが響いています、
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そして
- ごめんねって言葉
- どんな風に言えば
- よく出かけた公園
上の2行はメロディーもコードも一緒です。
3行目はメロディーが変わり、コードは「微妙に」違います。
1,2行目は
- FM7→G
3行目は
- FM7→G/F
と、コード進行が微妙に違うんですね。同じでも全然いいはずなのに。
2回鳴らして耳を慣れさせているので、3回目にわずかに「ふわ」っとした感じになるのがわかりますでしょうか。
同じようにまったりと曲が進んでいるように聴こえますが、実はひねりがきいています。
ラーメンを食べるときに1、2杯目はそのまま、3杯目はコショウを振って味を変えることで味に飽きないのと同じです笑
私の勝手な予測は、
- 作曲時に「3回一緒だとなぁ。メロディーも盛り上がるしちょっとコードもひねろう」
となったか
- セッションとなった時にナカケーが「桜井さ、ここの3行目のベースはFのままでもいい?」「いいよ!」
このどちらかだと思います笑
シンプルなベースライン
各パートについても書きたいですがあまりに長くなるので、ベースとギターにだけ触れます。
この今日はイントロからベースが「デッデー、デッデー」というフレーズが耳に残り、そのままずーーっとそのままベースが最後までほぼ変わらない、ミスチルの曲で滅多にないタイプの曲です。
ベース初心者でミスチルの曲を弾きたい人にはおすすめ曲ですね。
Aメロ(3)だけオブリを入れていて、これが楽曲のアクセントになってて素敵です。
全編に使われているワウギター
こちらもかなり珍しく全編ワウギターです。
ワウは一番多く使われるのは「チャカポコ、チャカポコ」というファンキーなものなんですが、ミスチルの曲にあるかなぁ?
パッと思い浮かばないです。
ミスチルのワウと言ってパッと思い浮かぶ曲は「CANDY」です。
あとはliveのときのDance Dance Danceのイントロですね。
改めて、ワウってバラードでもファンクでも狂気の沙汰(?)にも使えるオールマイティーに使えるエフェクターです。
SUGIZOの狂気の沙汰はこちらの動画から見れます↓(1分50秒~)かなり特殊な音作りではありますが笑
サックスとバックコーラスの存在感
- ベースもギターもシンプルなフレーズ
- ドラム、ピアノ、アコギ、オルガンというまぁまぁ少ない楽器類
- サビがサビっぽくない感じ
そうなると曲の途中から飽きてしまいかねないのに、飽きずに最後まで聴けるのは前述の「コードのひねり」等もさることながら、サックスとバックコーラスによるところが大きいですね。
why love someone love for man
I don’t know why love for man miss you
I don’t know why love someone love for man
I don’t know why love for man miss you
ネット情報ではこのように歌っているとのことです。
私には聴きとれないですが笑
サックスはいつもの山本拓夫さんですが、ソロも歌の後ろで吹いているフレーズも素晴らしく、楽曲を盛り上げてくれてますね。
最後に
書きたいことがありすぎて、過去最長の記事になってしまいました笑
最後にこの曲の特徴を書きます。
- 全編にせつなさがただよう
- 自分のことばかり優先しがちな男性あるあるが随所にある
- 微妙にダブルミーニングの歌詞
- ミスチルには珍しくサビがサビらしくない
- サビ頭は「せつない響きにせつない名フレーズ」のオンパレード
- 楽器もシンプルな演奏
というわけで、
ミスチルらしい歌詞とミスチルらしくないサビで成り立っています。
「蜘蛛の糸」とかもそれですね。最初聴いたときはサビはどこだ?と思ったほどでした笑
桜井さんが歌うと結局はミスチルの作品になってしまうのですが笑、これぞミスチル!という感じとは異なる魅力があるところが、逆に魅力なのかもしれないですね。