【楽曲解説】Mr.Children「クラスメイト ー音楽編ー」
クラスメイトの歌詞の解説の次は、音楽(サウンド)解説をします。
メンバー以外がギターを弾いている!!
まず、特筆すべきは田原健一、桜井和寿以外の人がギターを弾いていること。
これは相当珍しいですし、これから発表される曲では多分ありえないでしょう。
弾いているのは日本を代表するギタリストの1人である小倉博和さん。
bank bandにも参加しています。
※「ロマンスの神様」で桜井さんとツインギターでソロを弾く小倉さん
今調べてはじめて知りましたが、所属が烏龍舎ですね。
で、
クラスメイトでは、左から田原さんのギター、右から小倉さんのギターが聴こえます。
※ちなみに小倉さんがギターを弾いている確証はありませんが、あまりにうま過ぎるので絶対の絶対に間違いないです笑
なぜ小倉さんが入ったのか?
私の予想は「田原さんが弾けなかった」ですね笑
今ならともかく、この頃はまだ演奏が今よりうまくなく、ギターアレンジも小倉さんのようなアプローチができなかったんだと思います。
実際に聴く人が聴けば「右から聴こえるギターは超一流スタジオミュージシャン」とすぐにわかります。
バッキングもソロも、ものすごい存在感で、素晴らしいです。
それを踏まえても不思議なのは「似たようなクリーントーンでギターを2本入れている」ことですね。
多分、ミスチルでこの曲だけじゃないかなぁ。
もしかしたら田原さんのギターは必要なかったけど、それじゃ正式メンバーとして格好がつかないから無理矢理2本にしたのかもしれないです笑
とはいえ、歌い出しの4小節でコードが変わるのに田原さんは通奏低音のごとく同じフレーズを弾いていたり、田原節が感じられます。
でもまぁ、やっぱりメインギターは小倉さんですね。
ギターの音色も素敵です。
テレキャスターか、セミアコかな?
デイヴィッド・T・ウォーカーのような雰囲気ですね。
二人のギターがきれいにL↔Rに分かれているので、イヤホンやヘッドホンで聴く方はどちらかを外すとどちらかのギターが完全オフになるので試してみると面白いですよ。
右をオフにしたら間奏のギターソロも全く聴こえません。
これもミスチルの曲でこの曲だけだと思います。
ベースについて
ミスチルの曲で珍しくベースからはじまります。
「星になれたら」とかもそうですね。
で、
ベースは音色をなぜこれにしたのか謎です。
多分ピックで弾いています。
多分ベーシストにこの曲の演奏を依頼したらほとんどの人は「この曲は指で」となると思います。
で、もっとローを出してほっこりとした音にした方が楽曲に合うはずなんですよ。
これも「この頃はナカケーが指弾きが苦手だった」という理由だと思います笑
それにしてもペンペンし過ぎに聴こえるんだけどなぁ。
マスタリングで音が変わっちゃったのかなぁ。
一流揃いだからそんなことはないと考えると、この音が良いと判断したのか。
いや、それはもっとないと思うのですが。
謎です。。
優しいホーンアレンジ
ドラム、ベース、ギター2本、オルガン、シンセ、ボーンと使われていますが、中でも優しいホーンアレンジが良いですね。
「渇いたkiss」でもこの優しいホーンアレンジがされていて、当時のインタビューで「小林さんの優しいホーンアレンジが素敵」という趣旨のことを桜井さんが言ってましたが、「クラスメイト」でもその良さは光ってます。
イントロではそこにピョンピョンしたシンセが足されて存在感を出しています。
小林さんの場合、ホーンにプラスされるシンセ音は、チャイム系、ローズ系のほっこりとした音(渇いたkissではこちら)が良く使われますが、ピョンピョンしたイントロは他の作品であまり聴かれない音ではないでしょうか。
Aメロ(3)のあとに、ホーンの優しい音で短いソロがありますが、これはホルンでしょうか??
なんだか独特の優しい音で楽曲にぴったりです。
ちょっとめずらしい曲構成
以下の2つを見比べて見てください。
多忙な仕事あってこそ優雅な生活
なのにやり切れぬ Oh sunday morning
明け方の歩道「じゃね またね」と彼女
走り去るTAXI
上は曲の最初に出てくるAメロ、下は最後に出てくるAメロです。
違いがわかりますでしょうか。
下のメロディーは上のメロディーより2小節足りません。
2小節を繰り上げているような感じですね。
歌詞編で「Aメロ(3)」と私はつけましたが、「Cメロ(全く新しいもの)」とも言えます。
曲の最後にAメロをアレンジして持ってくること自体はよくありますが、小節数が変わっているのは珍しいです。
作曲する方はマネしたくなる技法ではないでしょうか。
ミスチルらしいせつない音について
※keyをCにして説明します。
ミスチル楽曲解説で度々かいているミスチルらしいせつない音がクラスメイトでは随所に見られます。
Aメロ終わり部分がせつないですね。
ここはFm7/Gという大人コードが鳴ってます。
※G7(♭9)かもしれないですが、こちらで統一してかいていきます。
ここでの歌詞は何かと見てみると
なのにやりきれぬ Oh sunday morning
ミスチルの楽曲解説で度々言っている「切ない音にはせつない歌詞がリンクする」桜井節が炸裂です。
「ぬ」でコードが鳴りますので、ここに集中して聴いてください。
多分意識して聴けば「ほんとだ、やりきれない音に聴こえる!」となるかと思います。
ここで使われている歌詞を並べてみます。
- なのにやりきれぬ Oh sunday morning
- 悩める事情にさいなまれ
- このままじゃ彼女かわいそうさ
完璧です!笑
もっとびっくりするのは・・・
転調してからは同じ部分で大人コードが使われてないんです!
転調してから、というのは歌詞で言うと『明け方の歩道「じゃねまたね」と~』以降です。
- 走り出すTAXI
- たまらなく寂しい
- 行き交う人並み
どちらもせつない歌詞なのに普通すぎるぐらい普通にGが使われています。
転調前はFm7/Gの大人せつないコードを使っていたのに。
なぜか?
前述のとおり、2小節カットになったことも関係あるとは思いますが、それより注目する点は歌詞です。
転調から歌詞の世界が変わっています。
- 彼女と会っているときの主人公のやりきれない気持ち
- 彼女が去るときの気持ち、日常に戻る様子
この2つの世界が転調で分けられて、さらにコードの使い方まで変わっています。
すごい深読みをすれば
- 彼女とのやりきれないせつない気持ち
↓
- 日常に戻っていく
ということを
- 不安でせつない音
↓
- 普通の音
になることで表現しています。
すごいことです。
この興奮はどれくらいの人が共有していただけるでしょうか笑
傘太郎調べではこんなことをやっている曲は他にないですよ。
D7の上でソを歌っている!
Bメロでもさすが!と言う点があります。
歌詞では「ランチ、3時」がさすが!ですよね?
音的にもずばりそこです。
D7でソを歌っています。
※Dトライアドで、メロディーだけがソにいっているように聴こえますが一応7thをかいておきます。
よく聴くと、先に後ろのシンセがソの音を先に鳴らしています。
sus4の音ですが、歌いやすく、音がとりやすく、聴きやすくもしているのかもしれません。
傘太郎調べでは、ポップスでD7に一拍目でソを歌う曲は他に知りません。
かなり珍しいアプローチです。
「陽は傾き街は3時」のメロディーは
- ラシド、ドレミ、ミファソ、ソードー
です。
- ラシド、ドレミ、ミファソ、ラードー
と、歌うのが普通です。
楽器が弾ける方は是非試してみてください。
ラードー、の場合、少々間抜け(陽気)に聴こえると思います。
普通はラードー、と歌うところをソードー、と歌い、切なくさせて、さらにその上に韻を踏んで歌うという、ソングライターの技をいくつも同時に魅せてくれた感じです。
すげえなぁ笑
そしてそのあとにキラリと光るコードはB♭M7です。
後ろめたさで微かに笑顔が沈んじゃうのは
仕方がないけれど
ここの「笑顔が」のあとにファーン、と鳴っている音です。
せつない浮遊感みたいなものを感じないでしょうか?
そこで使われている歌詞は?
- 沈んじゃうのは仕方がないけれど
- しばらくは彼の話はやめとこう
・・・完璧です!笑
ちょっと恐ろしいほどです笑
サビの素敵ポイント
Aメロの解説でかいた Fm7/Gがサビにも登場します。
- 思ってもない様な急展開
- もう 振り出しに戻れるわけない
の部分ですが、「急展開」の「い」でメロディーはレに行きますが、繰り返しのあとの「戻れるわけないか(※歌詞カードにないですが歌は<戻れるわけないか>と歌っています)」の「ないか」は「ミーレー」と歌っています。
Fm7/Gにはミの音はない音です(テンションノート)。
最初にコード構成音の「レ」を聴かせたあとに、同じメロディーの流れで「ミーレー」と歌うので一段とせつなさが際立ちます。
天才です笑
魅惑のサブドミナントマイナー
最後に、サブドミナントマイナーが分かりやすく使われているので紹介します。
「ただのクラスメイト」
そう 呼びあえたあの頃は a long time ago
「あの頃は」のあとにふぁ~んとせつない(暗い?)音が鳴ってます。
特にホーンセクションに特化して聴くとよりそのせつなさがわかると思います。
専門的に言うとサブドミナントマイナーという音で、数多くの曲で使われていて、私もオリジナル曲をかいたら1曲に1ヵ所以上は使います笑
クラスメイトでも何ヵ所かで使われているのですが、特にこの部分はふぁ~ん、となるのでぐっとせつなくなるがわかりやすく、サブドミナントマイナーの魅力を説明するのにすごくいい素材です。
他の曲では
- ゆずの夏色の「ゆっくり ゆっくり下ってく」の部分
- イエモンの楽園の「MAKE YOU FREE 永久に碧く」の部分
どちらも同じ手法です。
ゆずは「ゆっくり下っていく」と歌ってて、これも歌詞と音楽(コード)がバチッとはまってますね。
イエモンも韻を踏んでます。
クラスメイトでは
- a long time ago
- I wanna hold you again
と、英詞になり、バチッと合ってます。
名曲の多くは偶然か意図的かは別として、歌詞と音楽がバチッと合っていることが多いです。
ミスチルはその最高峰というわけです。
まとめ
長くなりすぎました笑
クラスメイトの音楽面でのすごいと思ったところ
- D7で1拍目にソを歌う。(しかもそこできれいに韻を踏んでいる)
- 転調で歌詞の世界が分かれていて、コードの付け方も歌詞に合わせたものになっている
この2つは特筆すべきポイントです。
同じことやっている曲は滅多に見つからないと思います。
この記事を書くに辺り分析をしたら、改めてミスチルの曲はものすごい!と感心するばかりでした。