【楽曲解説】抱きしめてTONIGHT

先日、マツコの知らない世界で「昭和ポップス」が取り上げられていました。

それからというもの昭和ポップス熱が高まり、マイブームとなっています。

そうして色々聴く中でどれかをここで書きたいなと思い、迷った結果「抱きしめてTONIGHT」について書きます。

抱きしめてTONIGHTとは

  • 1988年4月にリリースした田原俊彦の32作目のシングル
  • 作詞:森浩美/作曲:筒美京平/編曲:船山基紀
  • 『ザ・ベストテン』における本作の登場週数は14回
  • フジテレビ系テレビドラマ『教師びんびん物語』の主題歌 ※主役:田原俊彦

傘太郎から見た「抱きしめてTONIGHT」とは

1979年生まれの私が9歳の時に流行した曲で、当時は光genjiが好きだったので、「光GENJIの大先輩の人」としてトシちゃんを見ていました。

当然、リアルタイムで歌番組を何度も見て、曲を聴いていますが、今回この記事を書くにあたり、しっかり聴き返すと色々と発見がありました。

抱きしめてTONIGHTの7つのポイント

  • サビがわからない不思議なヒット曲
  • ミスチル割りが耳に残る
  • 驚愕の秘密がある?強烈なイントロ
  • 賑やかで時代を感じるリズムトラック
  • 謎のピョロローン
  • 印象的な曲タイトル
  • トシちゃんがすごすぎる

それぞれ書いてきます。

 

サビがわからない不思議なヒット曲

質問です。

抱きしめてTONIGHTのサビを歌ってください。

 

 

はい、心の中で歌ってみてください。

 

 

歌いました?

 

 

あれ?となりました?

 

 

サビはどこか?

 

 

正解は・・・

 

 

構成上で言えば「AH…もっともっと素直になれ」のところです。

サビに入るまでに1小節のタメがありますし、やっぱりここがサビと考えるのが妥当です。

でも、ここがサビ!?と多くの人が思い、そして、私の予想では半分くらいの方は「TELL ME, 心なら TELL ME, 動いてる 悲しみは 続かない」を歌ったんじゃないでしょうか。

なんでそうなるかも後述します。

さて、このサビがわからないヒット曲というのは、今の時代では考えられないことです。

しかし、当時のヒット曲(昭和ポップス)にはこの傾向は結構あります。

例えば「勝手にしやがれ」「木綿のハンカチーフ」「ブルーライトヨコハマ」なんかも「サビを歌って!」と言われても「え?どこ?」となりますよね。
※木綿のハンカチーフ、ブルーライトヨコハマも作曲は同じく筒美京平さん

抱きしめてTONIGHTはその中でも群を抜いて「どこ?マジでどこなの?」となります。

マツコさんも番組内でそのことを指摘していましたね。

「木綿のハンカチーフ」「ブルーライトヨコハマ」のように2部構成(Aメロ、Bメロしかなくどちらかがサビというもの)ならともかく、抱きしめてTONIGHTは5部構成(!)のがっつりJ-POP構成です。

 

  • Aメロ「悩み事をかくすの~」
  • Bメロ「君ばかりを 見てきたから~」
  • サビA(?)「AH…もっともっと素直になれ~」
  • サビB(?)「触れたら壊れそうな瞳だよ~」
  • 大サビ「TELL ME, 心なら TELL ME, 動いてる~」

 

こちらを見たらわかる通り、構成上は「AH…もっともっと素直になれ~」なんですが、そうは聴こえませんよね。

作詞家の松本隆さんが「筒美京平さんの曲は、曲だけだとよくわからないんだけど、詞が乗ると本当に素晴らしい歌になる」と言っていたそうですが、本当にその通りです。

私の場合「いい曲は弾き語りだけでも成り立つ」と思っています。

ディスるわけではなく、ミラクルだ!というポジティブな意味で抱きしめてtonightはそういう曲ではありません。

弾き語りをしたら抑揚にかけて、結構きつい仕上がりになります。

なんですが!

耳に残るし、カラオケでも盛り上がれます。

これが実に不思議。

通常、耳に残り、カラオケで盛り上がるには「サビが強い」ことが必須です。

この曲は「全部サビ」とも言えるし「サビがない」とも言えます。

なんでしょうね。この感じ笑

もちろん、作詞と編曲のすごさは大きいのですが、まずは作曲にスポットを当てて書き進めます。

 

ミスチル割りが耳に残る

符点8分音符をつかった所謂(?)「ミスチル割り」が効果的に使われています。

※ミスチル割りについては「ミスチル桜井さんの作曲のすごさを「innocent world」を例に3つに分けて解説」をご覧ください。

 

  • Bメロ終わりの「話してごらん
  • サビA(?)の「もっと もっと」
  • サビB(?)の「触れたら

 

「Bメロ終わり」曲のセクションが変わり、尚且つ、転調する前の印象に残るところに、印象に残るミスチル割りが使われています。

構成上は一番曲が目立つメロディーである、サビA、サビBの両方で、ミスチル割りが使われています。
※説明するまでもなくミスチルよりも筒美京平さんの方が先ですよ

つまりサビの直前、直後はミスチル割りが多発しています。

これは「innocent world」と同じ現象です。

ここが強烈なせいもあり他の曲にはない、面白い現象が起こります。

 

さて、皆さん、今度は「抱きしめてtonight」のAメロ(歌い出し)を歌ってみてください。

 

 

歌いました?

 

 

心の中でで良いですよ。

 

 

で、

 

 

これまた私の予想では半分くらいの方は

 

 

「なーやーみーごーとーをかーくーすーの」とミスチル割りで歌ったのではないでしょうか。

冒頭の動画の通り、正しくは「な、やみごーとをか、くすの」が正しいです。

これね、実に面白いです。

ミスチル割りに引っ張られるんですよ。

トシちゃんも2番の「踊りにゆこうか?」はミスチル割りで歌っています。

だからどうした、ということではないのですが笑、あまり見られないことなので面白いなと感じました。

 

驚愕の秘密がある?強烈なイントロ

「マツコの知らない世界」では「イントロで選ぶ昭和ポップス」の第3位に入っていました。

確かに耳に残る強烈なイントロです。

番組出演されていたサニーさんという方が言うには「テーテーテレッテテーレ―」は作曲の筒美京平さんで冒頭の「ンダッタラ~♪」は船山基紀さんの仕事だそうです。

余談ですが、サニーさんが「ンダッタラ~♪」の「」を入れているあたりがさすがだと思いました。

「ラブストーリは突然に」の冒頭のギターは「チュクチューン」ではなく「チュクチュチューン」だ!というのと同じです(わかりにくい笑)

本題に戻ります。

今になって聴き返すと、すごいきれいなトランペットの生音が「テーテーテレッテテーレ―」と吹いていることに気が付きました。

調べたら数原晋さんという方で、 北の国からのメインテーマも演奏されている方でびっくりしました。

他のメンバーもすごい方ばかりですが、中でも今剛(Gt)さんがいてこれまたびっくり。

今剛さんていまもバリバリ現役なんですね。

お笑いの世界と同じで第○世代の方々がいる限り、若手に仕事はこないんじゃないでしょうか笑

今さんのギターは相当耳を澄まさないと聴こえませんが笑

本題に戻ります笑

この「テーテーテレッテテーレ―」はどこかで聴きましたよね?

そうそう!

大サビの「TELL ME, 心なら TELL ME, 動いてる~」のところ!

・・・と思った方が多いのではないでしょうか。

実は違います!!

あえて言うなら「大サビのハモリパート」のようなメロディーです。

うそ?という方、冒頭の動画の3分45秒くらいから聴いてみてください。

ほんとうにハモってますよ!!

びっくりですね~。

こんなイントロのやり方があるんだと初めて知りましたよ!!!

そりゃ筒美京平さん自らここは指定しているわけです。

通常、編曲家がこのアイディアを思いつくことはまずないと思います。

さらに細かく言えば「TELL ME」の「テ」はキーをAmで説明すると「ラ・ド・ミ」という音に対して「シ」を歌っていて、トランペットは「ファ」です。

瞬間的に音ががっつりぶつかり合っているのですが、これがまた楽曲のスパイスとなっています。

※このあたりの「裏切りの音、すっぱいピクルスの音」については同様に「ミスチル桜井さんの作曲のすごさを「innocent world」を例に3つに分けて解説」をご覧ください

 

前述した「サビを歌って」と言われた時に大サビを歌う人が多いと思う理由はここにあります。

大サビのメロディー風のイントロで大サビを刷り込んでいますからね。

大げさに言えば、イントロが大サビなんですよ。

だから、曲の最後に大サビがきたら初めて聴く人でも「待ってました!」「またやっと聴けた!」感じになるわけです。

そして、イントロのトランペットとハモッてドカン!(?)ですから!!

そりゃ、耳に残るわけです。

いやはやものすごい。

で、

アウトロでは「ンダッタラ~♪」とイントロのド頭になるので、なんというか楽曲全体が納まるところに納まっています。

で、

最後の最後は「ダダダン♪」とトシちゃんのキメポーズで終わります。

こう書くと楽曲全体がほんとによく出来ていて感心するばかりです。

 

賑やかで時代を感じるリズムトラック

リズムトラックが賑やかですね。

クラップをはじめ、パーカッション系も結構はいっています。

ベースもドラムもオルガン系の音も打ち込みに寄せているのがわかります。

この時代の流行りだったんでしょうけど、私は苦手です笑

元音(生々しい音)の方が格好いいと思うので。

サビ(「AH…もっともっと素直になれ~」)でベースが1拍目に抜けてちょっとラテンぽくなりますが、ところどころに奥からベースと一緒に聴こえるドィッド(?)という音はなんだろう??シンセかなぁ。ベースを重ねているのかな?いずれにしても今の音楽に通ずる音の隠し味が効いてます。

 

謎のピョロローン

音の隠し味という点で言えば、「肘をついた姿勢で」の直前に「ピョロローン」という音が聴こえます。

これはなんだろ?アナログシンセ?

というかこれは必要なのか?笑

同様に間奏のメロディーを奏でている楽器もなんでしょうね?

 

印象的な曲タイトル

歌詞について言えば、何よりもすごいのがタイトルですね。

普通なら「抱きしめたいよ もっと」なんですが。

作詞の森浩美さんについて調べたら『日本ドッジボール協会』の設立に参加し、初の全国統一ルールをまとめあげた人でもあるそうで、色々とびっくりします笑

ちなみに石川さゆりさんには「抱きしめてサンバ」という曲を提供しているようです笑

曲中の「いつものように見つめかえす 君でほしいよ」は「いつものように見つめかえす 君でいてほしいよ」か「いつものように見つめかえす 君ほしいよ」の方が自然な気がしますが、この辺も謎です笑

 

~2020.0525追記~

記事を見てくださった方から、「抱きしめてTONIGHTはTom JonesのLove Me Tonightを参考にして作られた」との情報をいただきました。だから「抱きしめてTONIGHT」というタイトルになったものと思われます!音楽もインスパイアされているのがわかります。

 

トシちゃんがすごすぎる

冒頭の動画をみるとわかりますが、ほんとに格好いいです。

ダンスについて全く素人の私が見ても、ダンスが猛烈にうまいことがわかります。

「話してごらん~♪」の後なんて3回転の超高速ターンをしてますよ!!すご!!

今活躍しているダンス系のアーティストでも、このクオリティで、このカッコよさで、生歌で、生放送でやりきることができる人がいるでしょうか?

59歳になった今も生歌でこのダンスで11曲メドレー!!とかをテレビでやっていますからね。

マジで恐ろしいくらいすごいです。

プロ魂を感じて震えます。

 

最後に「マツコの知らない世界」について

3歳の息子がマツコさんを何かのキャラクターとでも思っているのか笑、やたらに好きで、それで最近になって見るようになったのですが、すごく面白いです。

毎回、その道のマニアが出るのですが「好きなものについて語る人の姿」はテレビ越しでもその嬉しさ、興奮が共有できて、見ていて気持ちがいいです。

中でもこの記事を書くきっかけにもなった「昭和ポップスの世界(2020.4.28)」のゲストだったサニーさん、高橋昌太郎さんは、知識も豊富で、昭和ポップスが好きな気持ちがあふれ出ているのはもちろんのこと、お二人の人柄の良さも伝わり、私としては神回となりました。

すっかり触発されて、最近は80年代の曲ばかりを聴いているので、また機会があれば別の曲についてもかきます。

参考までにサニーさん、高橋昌太郎さんが選んだイントロベスト20は下記の通りです。

1位の「魅せられて」はイントロというか、作詞、作曲、編曲、歌、歌手(ジュディオングさん)の顔・キャラ、衣装、振り付け、時代との相性などなど、「なにもかもオール満点」の化け物みたいな曲です。こちらについてもいつか書けたらと思います。

■先週のベストテン
(マニアが厳選!昭和の名曲イントロ・ベストテン)
第10位 君は1000% 1986オメガトライブ
第9位 そして僕は途方に暮れる 大沢誉志幸
第8位 夢芝居 梅沢富美男
第7位 ルビーの指環 寺尾聰
第6位 チェリーブラッサム 松田聖子
第5位 少女A 中森明菜
第4位 Romanticが止まらない C-C-B
第3位 抱きしめてTONIGHT 田原俊彦
第2位 異邦人 久保田早紀

今週のスポットライト!
瞳の誓い 井森美幸

第1位 魅せられて ジュディ・オング

■先週のベストテン
(※昭和の名曲イントロの11位~20位という解釈で良いと思います)
第10位 ふたりの夏物語 杉山清貴&オメガトライブ
第9位 夏色のナンシー 早見優
第8位 CAT’S EYE 杏里
第7位 ハイスクールララバイ イモ欽トリオ
第6位 2億4千万の瞳 エキゾチック・ジャパン 郷ひろみ
第5位 ダンシング・ヒーロー(Eat You Up) 荻野目洋子
第4位 銀河鉄道999 ゴダイゴ
第3位 プレイバックPart2 山口百恵
第2位 UFO ピンク・レディー
第1位 YOUNG MAN(Y.M.C.A.) 西城秀樹)
第10位 ふたりの夏物語 杉山清貴&オメガトライブ
第9位 夏色のナンシー 早見優
第8位 CAT’S EYE 杏里
第7位 ハイスクールララバイ イモ欽トリオ
第6位 2億4千万の瞳 エキゾチック・ジャパン 郷ひろみ
第5位 ダンシング・ヒーロー(Eat You Up) 荻野目洋子
第4位 銀河鉄道999 ゴダイゴ
第3位 プレイバックPart2 山口百恵
第2位 UFO ピンク・レディー
第1位 YOUNG MAN(Y.M.C.A.) 西城秀樹

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